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糖尿病による腎臓病(DKD)とその対策

[2026.05.05]

「血糖が高いと言われた。または、糖尿病と診断されたけれど、特に痛みもないし大丈夫だろう」 「腎臓が悪くなっていると言われたが、何に気をつければいいのかわからない」

糖尿病を患う多くの方が、このような不安や疑問を抱えていらっしゃいます。糖尿病の恐ろしさは、血糖値が高いことそのものよりも、それによって引き起こされる「合併症」にあります。中でも「糖尿病性腎臓病(DKD)」は、進行すると人工透析が必要になるだけでなく、心筋梗塞や脳卒中のリスクも大幅に高めるため、極めて注意が必要です。

本記事では、腎臓内科専門医として糖尿病による腎臓病について解説します。

1. 糖尿病性腎臓病(DKD)とは何か?

これまで、糖尿病による腎臓の障害は「糖尿病性腎症」と呼ばれてきました。しかし近年では、典型的な蛋白尿が出ないまま腎機能が低下するケースも増えており、これらを総称して「糖尿病性腎臓病(DKD:Diabetic Kidney Disease)」と呼ぶようになっています。

現在、日本において人工透析を導入する原因の第1位は「糖尿病性腎症」です。

腎臓の役割と「フィルター」の破壊

腎臓は、背中側の腰のあたりに左右一つずつある、握りこぶしほどの大きさの臓器です。その最大の役割は、血液をろ過して老廃物や余分な水分を尿として体外に捨てることです。 腎臓の中には「糸球体(しきゅうたい)」という、毛細血管が細かく丸まったフィルターのような組織が、片方の腎臓に約100万個存在します。糖尿病になると、この繊細なフィルターがボロボロになってしまうのです。

2. なぜ糖尿病で腎臓が悪くなるのか?(原因とメカニズム)

高血糖が腎臓を破壊するメカニズムは、大きく分けて3つあります。

① 血管への物理的なダメージ(高圧)

血糖値が高い状態が続くと、血液中の糖分が血管の壁にダメージを与えます。特に腎臓の糸球体は非常に細い血管の集まりであるため、高血糖の影響をダイレクトに受けます。血管が硬くなり(動脈硬化)、ろ過機能が物理的に壊れていきます。

② 代謝異常と酸化ストレス

糖の代謝過程で発生する「AGEs(最終糖化産物)」や活性酸素が、腎臓の細胞に炎症を引き起こします。これにより、糸球体の細胞が死滅したり、組織が繊維化(硬くなること)して、フィルターの目が詰まってしまいます。

③ 腎臓の「過剰ろ過」

糖尿病の初期には、高い血糖を処理しようとして、腎臓が無理をして通常よりも多くの血液をろ過しようとします。これを「過剰ろ過」と呼びます。短期的には処理能力が上がったように見えますが、長期的には腎臓を酷使することになり、早期の機能低下を招きます。

3. 糖尿病性腎臓病の「5つのステージ」

腎機能の低下は、以下の5つの段階を経て進行します。

  1. 第1期(腎症前期): 尿検査も正常ですが、腎臓は「過剰ろ過」の状態です。

  2. 第2期(早期腎症): 尿中にごく微量のたんぱく(微量アルブミン)が出始めます。自覚症状は全くありません。【ここでの発見が極めて重要です】

  3. 第3期(顕性腎症): 尿たんぱくの量が増え、一般的な尿検査でも「陽性」となります。むくみが出始めることもあります。

  4. 第4期(腎不全期): 腎機能が著しく低下し、体内に老廃物が溜まります。貧血や高血圧が悪化します。

  5. 第5期(透析療法期): 自分の腎臓だけでは生命維持が困難になり、人工透析や腎移植が必要になります。

4. 診断と検査:自分の「今のステージ」を知る

腎臓病は「沈黙の臓器」と呼ばれる通り、第4期になるまで自覚症状がほとんどありません。そのため、定期的な検査が欠かせません。

  • 尿アルブミン検査: 通常の尿たんぱく検査では見つからない、ごく初期のダメージを調べます。

  • eGFR(推定糸球体ろ過量): 血液検査の「クレアチニン値」から算出します。「腎臓が1分間に何ミリリットルの血液をきれいにできるか」を表す指標で、60を切ると要注意です。

5. 最新の治療薬とその効果

かつての糖尿病性腎症治療は「血糖を下げるだけ」でしたが、現在は「腎臓を直接保護する」強力な武器(薬剤)が登場しています。

① RAS阻害薬(ARB・ACE阻害薬)
  • 効果: 腎臓の出口の血管を広げることで、糸球体内の圧力を下げます。

  • 意義: 血圧を下げるだけでなく、尿たんぱくを減らす「腎保護効果」の標準治療薬です。

② SGLT2阻害薬(現代の特効薬)
  • 効果: 血液中の余分な糖を、塩分(ナトリウム)と一緒に尿へ排出します。

  • 意義: もともとは糖尿病薬ですが、腎臓内の圧力を適正化し、炎症を抑える非常に強力な腎保護効果が証明されました。現在は、糖尿病がない腎臓病患者様にも使われるほど画期的な薬です。

③ MRA(非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)
  • 効果: 腎臓の炎症や線維化(硬くなること)を直接抑えます。

  • 意義: 2022年頃から登場した新しい選択肢で、RAS阻害薬などと組み合わせて使うことで、さらなる進行抑制が期待できます。

④ GLP-1受容体作動薬
  • 効果: インスリン分泌を促すだけでなく、体重減少効果や抗炎症作用があります。

  • 意義: 肥満を伴う糖尿病患者様の腎保護に有効です。

6. 日常生活での「腎臓を守る」3つの対策

薬物治療と同じくらい重要なのが、日々のセルフケアです。

① 塩分制限(愛知県の皆様へ特に)

愛知県の豊かな食文化には塩分が多く含まれがちです。塩分は血圧を上げ、腎臓に過剰な圧力をかけます。

  • 目標:1日未満。

  • コツ:味噌汁は具沢山にして汁を半分にする、香辛料や酢を活用して「塩味」以外で味を整える。

② たんぱく質制限(ステージに応じて)

腎機能が一定以下(第3期以降)になると、たんぱく質の摂りすぎが腎臓の負担になります。ただし、高齢の方の場合は筋力低下(フレイル)との兼ね合いが難しいため、必ず医師の指導を受けてください。

③ 血糖・血圧・体重の管理
  • HbA1c: Hb A1c7.0%未満を目指すのが一般的ですが、個々の状態に合わせます。

  • 血圧: 腎保護のためには、未満(家庭血圧)を目標にします。

7. まとめ:早期発見と専門医による継続治療

糖尿病による腎臓病は、決して「避けられない運命」ではありません。

「微量アルブミン尿」が出る第2期の段階で見つけ、最新のSGLT2阻害薬RAS阻害薬を適切に使い、食事療法を組み合わせれば、進行を食い止め、あるいは改善させること(寛解)も十分に可能です。

当院では、腎臓内科専門医と管理栄養士が揃う体制で、患者様の「腎臓の寿命」を延ばすためのサポートを全力で行っております。

  • 「最近、足がむくむ気がする」

  • 「尿が泡立つ」

  • 「健診で血糖値や血圧を指摘された」

これらは、腎臓からの小さなサインかもしれません。どんな些細なことでも構いませんので、早めにご相談ください。

受診をお考えの方へ

当院では、待ち時間短縮のため24時間対応の予約システム「Wakumy」を導入しております。また、受診前にスマホから症状を伝えられる「SymView(Web問診)」をご利用いただくことで、よりスムーズで質の高い診察が可能になります。ぜひご活用ください。

 

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