個々に合わせた治療法
木枯らしに、冬の訪れを感じる季節となりました。
今回は、個々に合わせた治療法という内容で、一つの論文を紹介させていただきます。
降圧剤であるレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬(ACE阻害薬、ARB)は、腎臓の予後を改善し、心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中)を予防するということで広く用いられています。しかし、人によっては逆に腎臓の機能が急激に低下(急性腎障害)するなどの一面があります。中でも、腎機能低下がすでに低下している方や高齢の方などはその頻度が高いです。
腎臓内科医は、以前より服薬継続の恩恵(腎保護や心血管イベントの抑制)と害(急性腎障害や電解質異常)を比較し、前述の腎機能が高度に低下している方や高齢の方では異なる種類の降圧剤へ変更や内服自体を中止することがよくありました。
英国のSunil Bhandari氏らは、NEJMという雑誌で、重症の進行性CKD(eGFR<30)患者において、RAS阻害薬の投与を中止しても、継続した患者と比較して3年後のeGFR低下(腎機能低下)に関して重要な変化はなく、心血管イベントも同程度であることを示し、報告しました(2022年11月3日Renin–Angiotensin System Inhibition in Advanced Chronic Kidney Disease)この論文から、腎機能低下といっても、やはり画一的な治療ではなく、その進行具合によっても治療を変化させる必要性があると改めて感じました。
当院では、個々の状態(腎臓病の有無に関わらず、年齢や持病、価値観など)に合わせて治療に努めて参ります。
論文が掲載されているThe New England Journal of Medicine(NEJM)という雑誌は、200年以上にわたる歴史を有し,世界でもっとも権威ある週刊総合医学雑誌の一つです。医学界のトップジャーナルとして、今日望みうる最高水準の科学研究が毎週発表されています。
文責 副院長