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<むくみに潜む病気とその対策>

[2026.06.29]

「夕方になると靴がきつくなる」「朝起きたら顔がパンパンに張っている」「指輪が抜けなくなった」

日常生活の中で、多くの方が一度は経験する「むくみ(浮腫)」。

立ち仕事や座りっぱなしのデスクワーク、あるいは前日のアルコールや塩分の摂りすぎなど、生理的な原因で起こる一過性のむくみであれば、それほど心配はいりません。

しかし、休息をとってもなかなか引かない頑固なむくみや、急激に体重が増加するようなむくみの背後には、心臓、腎臓、肝臓、あるいは内分泌系の重大なサイン(SOS)が隠されていることがあります。

本記事では、総合内科専門医および腎臓専門医の視点から、むくみのメカニズム、背後に潜む恐ろしい疾患、ご自宅でできるチェック方法、そして日常生活での具体的な対策について詳しく解説いたします。

なぜ「むくみ」は起こるのか?(メカニズム)

人間の体の約60%は水分でできており、その水分は細胞の中(細胞内液)と外(細胞外液・血液など)で絶妙なバランスを保ちながら循環しています。血液中の水分は、毛細血管の壁を通して全身の細胞に酸素や栄養を届け、同時に老廃物を回収して血管内に戻ります。

この「血管から出る水分」と「血管に戻る水分」のバランスが何らかの原因で崩れ、細胞と細胞の間に余分な水分が異常に溜まってしまった状態が「むくみ(浮腫)」です。

バランスを崩す主な原因には、以下の3つが挙げられます。

  1. 血管内の圧力の上昇: ポンプ機能が低下し、血液が停滞して水分が血管外へ押し出される。

  2. 血液の「浸透圧」の低下: 水分を血管内に留めておくスポンジのような役割をするタンパク質(アルブミン)が減少する。

  3. 血管やリンパ管の通過障害: 水分や老廃物の通り道が物理的に塞がれてしまう。

むくみの背後に潜む「5つの重大な病気」

病気が原因のむくみは、放置すると命に関わる事態に進行することもあります。代表的な疾患を臓器別にご紹介します。

① 腎臓の病気(慢性腎臓病・ネフローゼ症候群など)

腎臓は血液をろ過し、体内の不要な老廃物や余分な水分・塩分を尿として排出する「巨大なフィルター」です。

腎臓の機能が低下すると、尿の量が減り、本来捨てるべき水分と塩分が体内に蓄積して全身がむくみます。また、「ネフローゼ症候群」という病気では、腎臓のフィルターが壊れ、血液中の大切なタンパク質(アルブミン)が大量に尿中に漏れ出してしまいます。これにより血液の浸透圧が下がり、血管内に水分を保てず、急激で深刻なむくみを引き起こします。朝起きた時の「まぶたのむくみ」は腎臓疾患の初期サインとして有名です。

② 心臓の病気(心不全)

心臓は全身に血液を送り出す「ポンプ」の役割を担っています。高血圧や心筋梗塞などが原因でポンプ機能が低下する(心不全)と、血液を前へうまく押し出せず、血液が静脈に渋滞を起こします(うっ血)。この渋滞による圧力で水分が漏れ出し、重力の影響を受けやすい「足の甲」や「すね」に強いむくみが現れます。進行すると肺にも水が溜まり(肺うっ血・胸水)、横になると息苦しくなるという症状が現れます。当院でも重視している「心腎連関(心臓と腎臓は密接に影響し合う)」の代表的な病態です。

③ 肝臓の病気(肝硬変)

肝臓は、体に必要なタンパク質(アルブミン)を製造する「化学工場」です。長年の過度な飲酒や肝炎ウイルスの影響で肝臓が硬くなる「肝硬変」になると、アルブミンを作り出す能力が著しく低下します。腎臓の病気と同様に血液中のアルブミンが不足するため、全身のむくみに加えて、お腹に大量の水が溜まる「腹水(ふくすい)」を引き起こすことがあります。

④ 内分泌の病気(甲状腺機能低下症)

甲状腺ホルモンの分泌が低下する病気(橋本病など)でも、全身にむくみが生じます。この場合、単なる水分の貯留ではなく、ムコ多糖類という物質が皮下に蓄積するため、後述する「指で押してもへこまない(圧痕を残さない)」という特徴的なむくみ(粘液水腫)が見られます。同時に、極度の寒がり、無気力、便秘、体重増加などの症状を伴うことが多くあります。

⑤ 血管・リンパ管の病気(深部静脈血栓症・リンパ浮腫)

「片足だけが急激に赤く腫れて痛む」という場合は非常に危険です。足の深いところにある太い静脈に血の塊(血栓)が詰まる「深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)」の可能性が高く、血栓が血流に乗って肺の血管に詰まると突然死の原因にもなります。また、がんの手術等でリンパ節を切除した後に、リンパ液の流れが滞って片側の腕や足がむくむ「リンパ浮腫」も注意が必要です。

ご自宅でできる「むくみのセルフチェック」

そのむくみが病的なものかどうか、まずはご自身の足でチェックしてみましょう。

【チェック方法】

すねの骨(脛骨:けいこつ)のすぐ上の皮膚を、親指で数秒間しっかりと強く押し当てます。その後、指を離して状態を観察してください。

  • 指の跡がくっきりとへこんだまま戻らない場合(圧痕性浮腫)

    体内に余分な「水分」が溜まっている証拠です。心不全、腎不全、肝機能障害などの内臓疾患が疑われます。

  • 指の跡が残らず、すぐに元に戻る場合(非圧痕性浮腫)

    甲状腺機能低下症による粘液の蓄積や、リンパ浮腫などの可能性があります。

日常生活でできる「むくみ対策」

生理的なむくみの予防・改善、および病的なむくみの治療補助として、以下の対策が有効です。

1. 塩分の過剰摂取を控える(減塩)

体には、塩分濃度を一定に保とうとする働きがあります。塩分を摂りすぎると、それを薄めるために体が水分を溜め込もうとし、結果としてむくみと高血圧を引き起こします。ラーメンのスープを残す、お醤油は「かける」のではなく「つける」など、日々の小さな減塩が腎臓と血管を守ります。(当院には管理栄養士が在籍しており、実践的で無理のない減塩のコツをご指導いたします)

2. カリウムを適切に摂取する

野菜や果物、海藻類に多く含まれる「カリウム」は、体内の余分な塩分(ナトリウム)を尿として排出するのを助ける働きがあります。

※【重要・腎臓専門医からの注意点】

すでに慢性腎臓病(CKD)が進行している患者様の場合、カリウムを尿に排出できず、体内に蓄積して危険な不整脈を起こす恐れがあります。自己判断でカリウムを多く摂る前に、必ず主治医にご相談ください。

3. 第2の心臓「ふくらはぎ」を動かす

ふくらはぎの筋肉は、足に下りた血液を心臓へと送り返す「強力なポンプ」の役割を果たしています。デスクワーク等で動かない時間が続くとポンプが働かず、血液が足に滞留します。1時間に1回は立ち上がって歩く、座ったまま「かかとの上げ下げ」をする、就寝時に足をクッションなどで少し高くして寝る、弾性ストッキング(着圧ソックス)を着用するなどの物理的な対策が非常に効果的です。

いつ受診すべきか?(危険なサイン)

むくみに加えて、以下のような症状が一つでも当てはまる場合は、内臓からの緊急のSOSかもしれません。できるだけ早く医療機関をご受診ください。

  • 数日で急激に体重が増えた

  • 少し動いただけで息切れがする、横になると息苦しくて眠れない(心不全の疑い)

  • 尿の量が極端に減った、尿が泡立って消えない、血尿が出る(腎疾患の疑い)

  • 片方の足(または腕)だけが急激に腫れて痛む、赤くなっている(血栓症の疑い)

稲沢クリニックでのアプローチ

当院では、総合内科専門医および腎臓専門医としての知見を最大限に活かし、「ただのむくみ」と見過ごすことなく根本的な原因を徹底的に探ります。

必要に応じて、採血・尿検査による腎機能・肝機能・甲状腺ホルモンの評価や、心電図検査、そして院内の「即日CT検査」を活用して胸水・腹水の有無などを迅速に確認し、その日のうちに診断と適切な治療方針をお伝えいたします。

「最近むくみがひどくて靴が履けない」「なんとなく体が重だるい」といった日常のささいな変化の中にこそ、病気の早期発見の鍵が隠されています。どんな小さなことでも構いません。ご自身やご家族のむくみで不安を感じられた際は、いつでもお気軽に稲沢クリニックへご相談ください。

 

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